“不思議”取り扱います 付喪堂骨董店 4



付喪堂骨董店』って、読んでてうめぇぇぇと唸る小説。とにかく毎回そうきたか! の連続で飽きが来ない。ヤバ面白。


今さらだけれど、『付喪堂骨董店』って一冊が4話構成で、それぞれに

  1. ちょいダークなオチ
  2. 咲タソハァハァ(最重要)

が割り振られてるのね。

で4巻だけど

テーマ的には「存在」「保証」かな。「存在の保証」だとちょっと違ってくるので分ける。ことりか! D.C.懐かしいな。
壮絶にフイタのはp233。
いいね、と思ったのはここ。

「彼のことが本当に好きなんだね?」
 舞野さんはその問いにも静かにかぶりを振った。
 ごまかそうとしている、とかではなかったと思う。けれど、否定ではなかった。
「よくわからないの」
「わからない?」
「ええ。確かにわたしにとって刻也は特別よ。でもわたしの中にあるこの気持ちがそういうものなのかは、わからない」
 舞野さんはまるで自分の気持ちを自分で確かめるように、静かに言葉を紡ぐ。
「彼は気づいていないけれど、彼はわたしのために多くのものを犠牲にしている。でもわたしは彼を失ったらきっと何も残らない。生きてさえいけないのかもしれない。だからわたしは負い目を感じたり、恐れを感じているだけなのかもしれない。彼を特別だと思っているこの気持ちの根源は、つまりそれだけのことなのかもしれない。
 ――ごめんなさい、変なことを言ってしまったわね」
 そこには彼女にしかわからない何かがあるようだった。
「あなたは優しい人ね」
 彼女は寂しげに目を伏せ、聞き間違いかもしれない消え入りそうな声を残して言った。
「わたしもあなたみたいに思えたら、よかったのに。……ただ彼の幸せだけを願えたら」
 舞野さんはそう言い残して、去っていった。
 今はまだ何も言ってやれないけれど。
 もしも歌恋が来栖君と納得して別れられる日が来たのなら、彼女に教えてあげたい。
 彼だけの幸せを願えない――彼と自分の二人の幸せを願ってしまっているのなら。
 君の中にある想いへの答えはもう出ているんだよ、と。

このやり取りだけでも価値はあるのだけれど、もう一歩踏み込むと、友と歌恋のこの直後の場面が、見事にこのやり取りと重なる。そして、ある一つの「if」を提示することにもなる。
友と歌恋の迎えた結末に、刻也と咲が至らないことを、あるいは至ることを祝して。