とらドラ8!



「黙れかみのけ座!」のセンスの良さは異常。(挨拶)


でまぁしょっぱなからだけど、8巻はここに尽きると思う。

「ずっと、みんなこのままだったらいいのにね」
 ずっと? みんな? このまま? それはつまり――なにかが引っかかった。ちょうどその瞬間だった。
 離れたところで囁きあう、北村と大河の会話が偶然耳に飛び込んできた。
 ……そうなの?
 そう。だからさ、もういっそ俺が、……。
 じゃあ私が……。
 え? そりゃ……でも、どうして? やっぱりなにかあったのか?
  ――なにを話しているかはわからなかった。インターネットの話でもなさそうだった。ただ北村は、さっきの傷を引きずったようなまだキズモノの表情をしていて、大河はどもりもせず、あせりもせず、そんな北村の顔を見つめて気遣うように自然に微笑んでいるのだった。目を覗き込んで、気遣わしげに、呼吸のタイミングを読もうとしているのがわかる。
 何年も前から、ずっと親しい友人だったかのように、二人は自然に寄り添っている。本当に、一体、いつの間に――。
「……おう。そうだな」
 引っかかった部分は、スルリと解けたみたいにどこかへ消えた。
「ずっと、このままだったらいいよな」
 ほとんど無意識、竜児はそう答えて、トレイに紅茶のソーサーを並べ始める。その作業に没頭する。
 結び目が本当に「解けて」消えたのか、それともより硬く頑固に強く結ばれて、小さく見辛くなっただけなのか、それは誰にもわからない。

(p140より)

「ずっとこのまま、仲のいい友達同士で居続けよう」
竜児が実乃梨に(事実上)告白しちゃった状態なのに、もういびつになってしまったのに、「このまま」であろうと、つなぎとめようとする実乃梨。そこに違和感を感じる竜児。

けれど、「大河が北村の近くにいること」を認識すると、竜児は途端にそれどころではなくなってしまう。
竜児にとっての大切なものの順番が、明確に「実乃梨<大河」となっていることに、読者も目を逸らせなくなる瞬間。
「……おう。そうだな」
 引っかかった部分は、スルリと解けたみたいにどこかへ消えた。
「ずっと、このままだったらいいよな」

ここ、ここですね、わかります。

この大事な2つの事柄がぽんぽん、とテンポ良く流されかけるけど、じっくり読みたいところ。特に竜児の寂しげ〜な気持ちはp196でも裏打ちされてるので見逃せない。


で、ここのところリアルな描写が増えてるとらドラ

「……そんなわけない。知らないことなんかないよ。大河のことは全部わかってるつもり」
 まだ言うか――意地の悪い気分のままに、大河と北村の初詣のことを言ってやろうかとも思うが、竜児はギリギリで口をつぐむ。別に喧伝して歩いたって意味などないのだ。ただ、実乃梨がそれを知らないということが、動かぬ事実としてあるというだけだ。
 そして、それを竜児は知っている。実乃梨は知らない、自分が知らないということを。
「……とにかく、おまえが思ってるより、ずっと事態は難しいってことだよ。そりゃ俺だって仲直りさせたいってのには賛成だけどさ」
「難しい……そうかもね。私が思ってるより、それに高須くんが思ってるよりも、そうなのかもね」
 ちょっと唇を尖らせてみせ、実乃梨は前髪を邪魔そうにかきあげる。あまり効かないエアコンの音ばかりがラウンジに響き、微妙に気まずく竜児は黙る。実乃梨も黙る。

(p202より。太字は引用者による)

この太字の箇所を読んだ時に、みんなフヒヒって思わず口に出しちゃうよな! な! ……な!
ちなみにこの後、このシーンを凌ぐ、更にオェーッ! となれること請け合いの吐露が見られます。フヒヒ! こういう場面の引用ばっかりしてるとまるでこういうのばっかなえぐい作品みたいですが、こういうのばっかなえぐい作品です。(


それと別のベクトルでヒョーホーなのがp215。ゆゆぽ節の中でも屈指の名シーンじゃないかな。
で、今巻では割と、つーかようやく亜美が爆発してた。

亜美目線の読みがよくまとまってる→川嶋亜美の憂鬱 - 犬の本棚

「実乃梨」を引き出せるのは亜美だけなんだよなー。キレみのりんのべらんめぇ口調があるある過ぎてまたしてもフヒヒ。フヒヒフヒヒ言ってるのは私のせいじゃなくて春田のせい。フヒヒ!