ミミズクと夜の王
再読。なんというか、ジブリの新作発表で『ハウルの動く城』のPVを見た時に、私が「こんな話になるんじゃないのかな」って想像してたストーリーが、まさにこの『ミミズクと夜の王』の構成だった。(結局違う形だったけど)
ジブリアニメっていうのは女の子が強い。シータ、キキ、サン、千尋、ナウシカ、とかあの辺。
で、それが何かって言うと、私が本をよく読むようになったきっかけである、児童文学に重なるところがある。私の大好きな荻原規子さんの勾玉シリーズなんかが最たるものだけど、苑上、遠子、狭也なんかはホント本を読んでて目を離せない。
この女の子の強さっていうのは、守り人シリーズのバルサのような、腕力の強さではない。
彼女たちは皆非力で、腕を掴まれれば動けなくなるし、抱きすくめられれば抗うこともできない。
じゃあどこが強いのかっていうと、それは心。
彼女たちははじめ、心も弱い。でも、ヒーローと出会い、惹かれていく。
そこに描かれるのは恋する乙女の強さ。どんな逆境でも、そんなの関係ねぇとばかりに飛び込んでいく。
ストーリーラインが、腕力の強いヒーローが囚われる→彼女たちのような女の子が周りの助けを借りてヒーローを解放する、という流れになることが多く、そこに見ている側のハラハラ感というか、カタルシス(抑制された後の解放感)のようなものがある。これが魅力なんじゃないかな。児童文学らしく、読み手に同い年くらいの女の子を想定してるから、ってのもあるかも。
で、この『ミミズクと夜の王』が児童文学として読まれるのは、「か弱いミミズクが魔物の王である夜の王を助ける」という大筋が、まさに児童文学で求められている構造であるからだと思う。
視野を広くしてこの作品を読むとそんな感じ。児童文学が好きな私は、当然この作品が好きですよ、というアピールから。(笑)
作中人物について
この作品で描かれる人物は、誰もが魅力的。
主人公であるミミズクは上述の通り、非力だけど人を想う心が強い女の子として。
話の内容的には、「人側」「魔物側」として書き分けられている。
ここでは、夜の森を侵攻せんとする「人側」の王、その息子である王子クローディアスについて。
ぼくも、アンディとオリエッタの子供に生まれていたらよかったのに」このクローディアスは、生まれながらにして身体が弱かった。そして王は、そのような王子の姿を民衆に見せては国の大事であるとして、王子を城の隅に置いておいた。
蚊の鳴くような小さな声に、アン・デュークはクローディアスを覗き込んだ。
「父上が嫌いかい?」
「嫌いじゃない!!」
クローディアスは大きくかぶりを振った。
「嫌いなものか! でも、ぼくみたいなのが王子だから、国王は絶望なさっているはずだ! ぼくが……こんな身体だから……!! 母上を殺して、生まれて来たのに……!」(p175より)
なれば、そういった立場に立たされた王子は、王に対して憎しみを抱きたくなるもの。でもクローディアスは違った。ままならない思いを、自分にぶつける。
で、ここはぜひ読んでもらいたいところなんですが、この王も決してこの状態に甘んじているわけではない。国を思う以上に、息子をも想っている。
そのために何をしたか。この部分がストーリーの進行の根幹を成している。
ちなみに、私は魔物側の方が好きです。(笑) けれど、そうではない人側を取ってみても、これだけの魅力ある描き方がされている。
そう、この物語に、悪者はいない。
誰もが誰かを想うところに、この作品の読後のさわやかさがあるんじゃないかなぁ。ひぐらしやった人なんかには、「ここにジジのないジジ抜きがあるぞ」って薦めたい感じ。
ここが好きメモ
◆p182
ミミズクの叫び。ミミズクの変化と、地べたを這いつくばって、忘れていた自分を食いちぎってやりながら立ち上がろうとする描写が実にいい。
◆p200,201
クロにも「フクロウ」と「夜の王」の間に、少しばかりの間隙があることを示してくれるシーン。この作品は対比される事物が多いけれど(後述)、ここのクロの「フクロウ」と「夜の王」の間の迷い(迷い、ってのはちょっと違うかも)は、王の「王子」か「国」かに近いものがあると想う。
◆p212
たまんねぇ。
◆p246
ありがとう、という言葉が出てきて嬉しかった。ごめんは誰も得しないけど、ありがとうはみんなが幸せになる言葉だと思う。
◆p261
は人生。
作品内の対比
この作品のなかには、三組の男女がいる。
王と王妃。
アンディとオリエッタ。
ミミズクとフクロウ。
特にオリエッタの、
どこにも行かないのも、自由の選択肢の一つではなくて?」このミミズクにかけた言葉は、この三組にかかってくるものだと思う。(p218より)
この三組がどういう対応をしているのか、ってのを考えながら読んでて、私は面白かった。
夜の王の話ってどっかで聞いたことあるなーどこだっけなーと思ってたら
シャナのカムシンだった。